食の安全と安心

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はじめに

お客様の健康的で心豊かな食生活を担う私たちにとって、仕事で
最優先するべきことは、
「食の安全と安心」の徹底です。
● 本項目については、原理原則と
なる一般的な基本(常識)のみを記載しています。
● 毎日の仕事においては、必ず各社で決められた
方針・ルールを確認、厳守して作業を行って下さい。

1.安全と安心の関係

『食』を提供する上では、絶対に安全だという保証はなく、自動車の運転と同じように「常に予測できない危険がひそんでいる」という高い安全意識を持つ必要があります。
🔶 特に生命をおびやかす「食中毒」「異物混入」「食物アレルギー」の発生は、取り返しのつかない 重大な問題ともなります。
『食』に携わる仕事の責任を再認識し、 会社のルールを徹底しましょう。 使命と責任
🔶 そして誤解を招くような情報提供にも注意する必要があり、「食品添加物」「農薬」などの安全性に関しても、正確にその根拠を理解し、正しい情報の提供を心がけましょう。

安全な『食』の提供は、何よりも優先されることです。
確実に実行していくために必要な知識を確認しましょう。
「食の安全安心」というように、安全と安心はひとくくりにして使われることがよくありますが、この二つの意味は大きく異なります。
安心 例えば東日本大震災の後、国が農作物について安全であることを示す数値を発表しても、多くの国民が、その情報に疑問を抱き、農作物などに対する放射能の影響に関して、長期間に渡り風評被害が発生しました。
安全は科学的な根拠に基づく客観的なものですが、それだけでは、安心は生まれません。
その安全を信用できる『信頼』があって、はじめて安心が芽生えます。
そして、大切なことは、長期間に渡り培っ信頼は一度失ってしまうと簡単に取り戻すことができないということです。
食中毒・食品偽装・風評被害・おとり広告など食に関する事件が社会問題化している中、『信頼』の確保は重要な要素となっています。
安心のレベルは、安全と信頼を形づくるそれぞれの要素のレベルに左右されます。
重要なのは、どんなに優れた点が多くても安心のレベルは、水桶(おけ)と一緒で、各要素の中で一番低い要素のレベルになってしまうということです。


2.食中毒


約束
食品安全委員のメッセージ

お客様の健康を支える私たちは、
お客様の生命の危機にも直結する
食中毒や食物アレルギーの発生を、絶対に防がなければなりません。
🔶 食中毒は、お客様が腹痛・下痢などで苦しむだけでなく、生命さえも失う可能性があります。
そして、その発生による信頼の喪失は、簡単に取り戻すことができないのです。
🔶 近年の食中毒は、高温多湿の梅雨~夏期だけでなく、一年中全国で発生しており、深刻で大規模な食中毒事件も後を絶ちません。
食中毒の原因は、細菌・ウイルス・自然毒・化学物質・寄生虫など様ざまですが、会社ルールに則った適切な衛生管理・温度管理・期限管理により、その発生を確実に防ぐことができます。
商品購入後のお客様による家庭での保存や調理も食中毒に直結しますので、正しい情報を的確にお伝えすることが大切です。
食中毒とは?
食中毒とは、食中毒を起こす元となる細菌やウイルス、有毒な物質がついた食べ物を食べることによって引きおこる下痢や腹痛、発熱、吐き気などの症状などのなどの健康被害(病気)のことです。
食中毒の原因や元の量によって、症状や食べてから発症までの時間はさまざまですが、時には命にも関わることもあるとても怖い健康被害で、過去には多くの人命が失われた大規模な集団食中毒事件も発生しています。
食中毒の分類|
細菌性
|
感染型 |
一定の数以上に増えた細菌が、人の消化管内で定着・増殖 することが原因で健康上の障害を引き起こすもの サルモネラ菌・腸炎ビブリオ菌・病原性大腸菌など |
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毒素型 |
食品内で細菌がつくり出した一定量以上の毒素が原因で健康上の障害を引き起こすもの ウェルシュ菌・ブドウ状球菌・ボツリヌス菌など |
|
|
感染毒素型 |
感染した後に毒素を作りだすもの 病原大腸菌(含むO-157)など |
|
|
自然毒
|
動物性 |
魚毒(ふぐなど)、貝毒など |
|
植物性 |
毒キノコ、ジャガイモの芽など |
|
| 化学物質 |
重金属(スズ、カドミウム、ヒ素化合物、鉛 など)、農薬、洗剤、ヒスタミン など 化学物質によるもの |
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|
原 虫 |
クリプトスポリジウム、サイクロスポラ、赤痢アメーバ、トキソプラズマ など原虫 に よるもの |
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寄生虫 |
アニサキス、旋尾線虫、横川吸虫 など寄生虫によるもの | |
主な食中毒の発生数(事件)の推移
➐ 腸炎ビブリオ ➑ アニサキス
食中毒の月別の発生数(事件)(2024年)
主な食中毒の原因と特徴

➊ カンピロバクター
◆ 主な原因食品
加熱不十分な食肉(特に鶏肉)
◆ 主な発生時期
年間発生しているが、増加する時期は、6月~11月
◆ 主な症状
下痢・腹痛・発熱・吐き気・嘔吐
◆発症までの時間
2日から6日と長い
◆予防方法
・十分な加熱調理(特に鶏肉・牛肉)・生肉で使用した調理器具は、 他の食品の調理で使わない。
・生肉と調理済食品は別々に保管


➋ ノロウィルス
◆ 主な原因食品
二枚貝(生ガキ・加熱不十分な貝)
◆ 主な発生時期
9月頃から発生し、冬場1~3月がピーク
◆ 主な症状
吐き気・嘔吐・下痢・腹痛・軽い発熱
◆発症までの時間
24時間~48時間
◆予防方法
・十分な手洗いと 手洗い後の消毒
・十分な加熱調理


➌ サルモネラ属菌
◆ 主な原因食品
鮮度劣化した生卵、加熱不十分な食肉(特に鶏肉)
◆ 主な発生時期
5月~11月
◆ 主な症状
腹痛・激しい下痢・発熱・嘔吐
◆発症までの時間
6時間~72時間
◆予防方法
・鮮度劣化した卵・食肉の十分な加熱
・卵は冷蔵庫で保存


➍ ウェルシュ菌
◆ 主な原因食品
大量に調理したカレーやシチューなどの煮込み料理
◆ 主な発生時期
年間を通して発生
◆ 主な症状
下痢・腹痛
(比較的軽症)
◆発症までの時間
6時間~18時間
◆予防方法
・大量の加熱料理は早めに食べるかすぐに低温で保管
*弁当・仕出し・給食などに注意
・生肉と調理済食品は別々に保管 

➎ 病原大腸菌[含むOー157]
◆ 主な原因食品
生食や加熱不十分な肉
*Oー157の多くは牛肉の料理
◆ 主な発生時期
6月~10月
◆ 主な症状
下痢・腹痛・発熱・嘔吐・血便
◆発症までの時間
12時間~8日
◆予防方法
・肉類の十分な加熱調理
・十分な手洗いと手洗い後の消毒


➏ ブドウ球菌
◆ 主な原因食品
おにぎり・弁当・サンドイッチ・ケーキなど手に触れて調理したもの
◆ 主な発生時期
年間を通して発生
◆ 主な症状
吐き気・激しい嘔吐・下痢・腹痛
◆発症までの時間
1時間~3時間(短い)
◆予防方法
・十分な手洗いと手洗い後の消毒
・手・指に傷がある場合、食品に触れない。


➐ アニサキス
◆ 主な原因食品
魚介類の刺身・寿司
◆ 主な発生時期
年間を通して発生
◆ 主な症状
激しい腹痛・下痢・嘔吐
◆発症までの時間
1時間~10時間~数日後
◆予防方法
・調理の際に、目で見て除去
・ー20℃以下で24時間以上冷凍
・加熱調理 

3.衛生管理


💥 食中毒予防の3原則 💥


清潔 つけない!
食品に微生物をつけないよう清潔を心がけましょう。
●衛生的な手洗い ● 調理器具の洗浄 ● 食品の区分
迅速/冷却 増やさない!
食品についた微生物が増えないよう、迅速な保管・調理・販売と冷却を心掛けましょう。

●迅速な保管・管理 ● 冷蔵10℃以下・冷凍-15℃以下 ●先入れ先出し
スーパーマーケットでの冷蔵・冷凍品保管における基本的な温度基準は、食品衛生法では冷蔵は10℃以下、冷凍は-15℃以下となっています。ただし、品目によっては生鮮食品が0〜3℃、乳製品が3〜5℃、青果が5〜7℃など、さらに細かく推奨される温度が異なる場合があり、これらは菌の増殖を抑え、食品の安全性を確保するためのものです。
温度帯による細菌の状況

|
110℃ 100℃ 90℃ 80℃ 70℃ |
ほとんどの細菌は死滅する。 ※ 加熱調理は75℃1分間以上 ※ 温惣菜の保温は65℃以上 |
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60℃ 50℃ 40℃ 30℃ 20℃ 10℃ |
活発に増殖する。 ※ 30~38℃が急速に発育 |
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0℃ -10℃ |
低温細菌は繁殖する。 |
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-20℃ -30℃ |
ほとんど発育しない。 |
加熱/殺菌 やっつける!
大部分の微生物は熱に弱いため、中心まで十分に加熱することが食中毒予防に有効です。
調理器具は常に殺菌した状態で使用します。

●加熱による殺菌 ● 薬剤による殺菌
加熱調理は、目安として中心部が75℃ で1分間以上
※ ノロウイルス汚染の恐れのある食品は85~90℃で 90秒間以上
揚げ物などの温惣菜は、65℃以上の温蔵庫で保管(食品衛生法)
💥 食中毒予防の5S活動 💥
店舗で衛生管理を徹底するための基本的な取り組みが「5S活動」です。
整理
必要なもの、必要でないものを区別し、不要なものは“捨て”ます。
整頓
必要なものを整理・分類し、必要な時に“取り出せる”ようにします。
清掃
作業場をきれいに清掃し、ゴミ、汚れが“目立つ” ようにします。
清潔
作業場は常にきれいに清掃し、ゴミ、汚れが“目立ち、発見”できる状態にします。
ようにします。
習慣
習慣づけて、毎日継続、実行することが大切です。

『食の安全』を守るため
毎日確実に
整理・整頓・清掃・清潔・習慣
の5Sを実行
💥 食中毒予防の個人衛生 💥
微生物や異物の食品への汚染を防止するために、食品を取り扱う各人が行なうべき基本的な衛生管理です。
健康管理
➊ 食品を取り扱う担当者として、健康管理は非常に大切です。
➋ 体調が悪い場合は、必ず会社に報告します。
➌ 下痢の症状や手に傷がある場合は、商品づくりや調理はできません。
身だしなみ
(出社前)
➊ 洗顔・洗髪はしっかり行ないます。
➋ 髪の毛が商品に混入しないように、ブラッシングも心がけましょう。
➌ 爪は、手のひらの側から見えない程度に短く切ります。
➍ 下痢の症状や手に傷がある場合は、商品づくりはできません。
身だしなみ
(作業前)
➊ アクセサリーや許可のない私物は持ち込めません。
➋ ユニフォームは常に清潔なものを身につけます。
※ 特に靴の汚れもチェックします。
➌ 調理を行う場合、 髪は帽子・ヘヤーネットの中に、はみ出さないようにしっかりと入れます。
★ 会社のマニュアルに則り、チェックします。

4.食物アレルギー


食物アレルギーとは?
食物アレルギーとは、特定の食品を食べたり接触したりすることで、体がその食品の成分(アレルゲン)を異物と認識し、免疫が過剰に反応することで、じんましん、湿疹、咳、下痢、腹痛などの症状が引き起こされる病気です。
🔶 食物アレルギーの原因食品は、四大原因食品と言われる「鶏卵」「牛乳」「木の実類」「小麦」が多く、4つの合計で全体の7割以上を占めています。
食物アレルギーには有効な治療法がないため、原因となる食物を食べないことが予防・治療になることはいうまでもありません。
そのため、 アレルギー表示はお客様の健康と生命を守るための重要な表示です。
アレルギー表示は、食品表示法によって定められています。
🔶 食物アレルギーでは、最悪 の場合、呼吸困難や血圧低下、意識障害など全身に劇的な反応が起こり、 生死にかかわる危険性があります。(アナフィラキシーショック)


【表示義務のない商品】




5.食品表示

食品の表示については、法律やルールが多くあり、複雑ですが、 うっかり間違うと、不信感につながるばかりでなく、お客様の健康面に重大な悪影響をおよぼす場合もあります。
基本を理解し、会社のルールにのっとり、不明な場合は、必ず確認しましょう。
医薬品的効果を表示していませんか?
食品は医薬品とは異なるため、たとえ特定の栄養素を豊富に含み、効果が期待できても、「ガンに効く」とか「生活習慣病の予防」など、医薬品的な効果・効能を表示することはできません。
※ 特定保健用食品・栄養機能食品・機能性表示食品に認められている効果・効能は、医薬品的効果 とはみなしません。
特売品の比較価格に根拠はありますか?
販売する価格と比較する価格の両方を記載する場合、比較する価格は「メーカーがカタログ等で広く公表している価格」や「十分な販売実績のある価格」でなければなりません。
尚、単に「全品半額」など、比較対象を明確にせずに安く見せかける表示も不当表示となります。

あいまいな受賞歴等を表示していませんか?
商品や生産者の受賞歴などをPRするのであれば、表彰対象・受賞年・大会名・受賞項目など明記します。
根拠なく「特選」「最上級」などの表示をしていませんか?
表示内容に客観的な基準、根拠が無いと不当表示にあたる恐れがあります。
特色のある原材料の表示方法は適切ですか?
少ししか使っていない原材料をおおげさに強調するとお客様は誤解されてしまいます。
原材料の産地や品種、栽培方法などを強調したい場合は、法律による表示方法に則って下さい。
うっかりはNG! しっかり確認!!

6.期限表示

法律で定められている期限表示のルールを正確に理解しましょう。
期限表示には「消費期限」と「賞味期限」があり、品質の劣化が早いものは「消費期限」、品質の劣化が比較的緩やかなものは「賞味期限」を、商品に記載します。
「消費期限」「賞味期限」とも開封されていない状態で、かつ、表示されている方法により保存した場合に限り、保証される保存期限です。
【消費期限】(use-bydate)
いたみやすい食品に表示される、この「年月日」まで、「安全に食べられる期限」
➠ 必ず期限内に食べる必要があります。
製造日を含め概ね5日以内で品質が急速に劣化する食品で弁当・惣菜・生菓子・生めん・精肉・鮮魚など弁当など、特に品質劣化の早い商品については、時刻が表示されます。
(望ましいとされています)
【賞味期限】(best-beforedate)
この年月日まで、「品質が変わらずにおいしく食べられる期限」
➠ おいしく食べれる期限で、期限を過ぎたら食べられないということではありません。
製造日を含め、概ね5日を超え、品質が比較的劣化しにくい食品で、乳製品・ハム類・冷凍食品・缶詰・スナック菓子・カップめん・ペットボトル飲料など3ケ月を超えるものについては「年月」だけ の表示も可能です。
【販売期限】(sell-bydate)
➠ お客様が購入後、保管~調理~食事などにかかる期間を考慮して「各社で設定する期限」
製造日 概ね5日 3ヵ月

製造日表示 年月日表示 年月日表示
又は年月表示
賞味期限 消費期限
(安全に食べられる期限)(おいしく食べられる期限)
残留農薬のポジティブリスト制度
残留農薬については、輸入が拡大する中、安全性を高めるため、2006年の食品衛生法改正で、それまでのネガティブリスト制度が廃止され、ポジティブリスト制度がスタートしました。
ネガティブリスト制度
原則規制がない状態で規制するもの だけリスト化し、残留基準を定めたもので、リストにない農薬はいくら残留があっても規制できず、とても問題がありました。

ポジティブリスト制度
原則規制(禁止)された状態で、使用を認めるものだけリスト化したもので、リストにない農薬の残留は全く認められなく、高い安全性が実現できました。
残留農薬に対する監視がより厳格になり、違反をした場合、直ぐに回収しなければならず、信用も大きく失墜するため、農家や関係流通業者の農薬に対する意識が格段に向上し、今はほとんど違反が 発生しない状況となっています。
ポジティブリストによる残留農薬の厳格なチェック
✅リストにない農薬 ✅リストにある農薬のみで
✅リストにある農薬で ✅かつ基準値を超えていない
基準値を超えている
